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こちらギルドの調査員
こちらギルドの調査員
Author: 月城葵

第1話 石橋を叩いて壊す者1

Author: 月城葵
last update publish date: 2026-06-12 22:10:21

「おらぁ、もういっちょ!」

「グギィィィ」

 逃げ惑う魔物を、後ろから容赦なく切り捨てる。

 情けなんてかけている場合じゃない。

「お前、逃げんなっ」

 全力で投げた石ころが、ガツンッ! とゴブリンの側頭部を打ち抜く。

「ギャッ!」

「はぁ、キリがねぇ」

 一体、何匹いるんだか。

 反対側は、ナックが踏ん張ってるからいいとして……。

 え? 何やってるかって?

 どっかの馬鹿な冒険者のせいで、絶賛、山の中をゴブリンと大運動会中だ。

 定時は過ぎてんだけどな。

 このまま帰ったら、ゴブリンじゃなくて、俺の首が飛びかねない。

 だったら、やるしかないだろ?

「こなクソォ~!」

 ヤケクソ気味に森の中を疾走中、異様な光が目に入った。

 近寄ってみれば、ひしゃげた金属の残骸だった。

「魔道具か?」

 証拠は確保。

 何かは知らん。

 今は、それどころじゃねぇ。

 あとで調べりゃいいだろう。

「チッ! まだ、いた」

 ……こりゃ、徹夜だな。

 ◇ ◆ ◇

「あぁ~、眠ぃ、胃が痛ぇ」

 よりにもよって、朝っぱらからだ。

 冒険者の英雄様が魔物をぶっ倒す裏で、誰が後始末してると思う?

 そう、俺。

 ギルド所属の調査員だ。

 冒険者に依頼を出したり、冒険者がやらかした後の尻拭いが、俺の仕事。

 つい先日も魔物の群れのボスを先に排除しちまうもんだから、雑魚は逃げるわ、逃げる。

 近隣に被害が出る前に運動会よろしく、山の中を駆け回ってたところだ。

 つまり――事件が片付くころ、俺の胃はだいたい死んでる。

 もうちょい考えて討伐してくれ……ほんとに。

 なんで、そんなことしてるのかって?

 話すと長いわりには、大したことないから手短にするぞ?

 人生ってのは思ったよりも短い。

 二度目の人生ともなれば、なおさらだ。

 この世界に産まれ落ち、あっという間に二十年経った。

 前世? まぁ社会人やって、気がついたらこっちの世界でガキになってた。

 ありがちな話だろ。

 しかも拾ってくれたのが霧の魔女。

 世間じゃ恐れられてるらしいが、俺からすれば忘れっぽい母ちゃんだ。

 ……飯はまともに作れないし、古臭い口調でのじゃのじゃ言うし。

 まともに母親かって聞かれると、返答に困るけど。

 そんなこんなで育てられた俺は、気がつきゃ冒険者になって、最年少で中級までいって、怪我で引退したことになっている。

 今はギルドの調査員。

 ようするに裏方だ。

 冒険者に夢見てるやつらからしたら、地味で退屈に見えるかもしれない。

 だが俺からすれば、これが案外ちょうどいい。

 事件の裏側が、ちょいとばかし見える気がするしな。

 ……さて、今日も石橋を叩いて壊して、自分で架ける仕事の始まりだ。

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